市場調査会社「Mintel Group」の日本法人である株式会社ミンテルジャパン(東京都千代田区)は、世界的なデオドラントの最新動向を調査し、日本の消費者調査の結果を基に、日本市場に与える影響やビジネスチャンスを考察するレポート『デオドラント・トレンド - 日本 - 2025年』を発表しました。本レポートでは、欧米諸国においてデオドラントを使用する消費者が約9割と市場が飽和しつつある一方で、日本市場は堅調な成長を続けていることが示されています。数字で見ると、イギリスのデオドラント市場の年平均成長率(CAGR:2023‐27年)は0.5%にとどまるのに対し、日本市場では猛暑の深刻化や美容意識の高まりを背景に、2024‐28年に2.7%の成長が見込まれています。
※ミンテル、ロンドン本社を含め14か国にオフィスを構え、美容やライフスタイル、食品・飲料分野における消費者調査に強みを持つ市場調査会社。2021年より日本市場向けにミンテルジャパンレポートを発刊。
国内においては、インフレの影響により、約3割の消費者がBPC(ビューティー・パーソナルケア)カテゴリーで節約志向を示しているものの、デオドラント製品に関しては支出が堅調に推移する傾向にあり、2025年の金額ベースでの市場成長率は1.2%(前年比)に達すると予測されています。
また海外ではすでに、香りやスキンケア機能を備えた“+α型”のプレミアムデオドラントが支持を集めています。日本では、「ニオイ対策」や「殺菌」といった従来の用途にとどまらず、「見た目の美しさ」へのニーズが高まりつつあります。ミンテルの行った調査によると、女性の42%が「人前で大汗をかくのはみっともない」と感じているという調査結果もあり、ニオイだけでなく、汗の“見た目”に対する不快感も広がっていることがわかります。こうした背景から、汗ケアに対する意識が日本でもより高まっていくと考えられ、海外ですでに展開されているプレミアムデオドラントへの注目も、今後一層高まるでしょう。
本レポートでは、グローバルと国内市場の動向の違い、美容志向を背景とした汗ケアニーズの変化など、2025年のデオドラント市場における最新トレンドを多角的に分析いたします。
※本リリースの調査結果をご利用いただく際には、必ず【ミンテルジャパンレポート『デオドラントトレンド - 日本 - 2025年』より】とご明記ください。
ミンテルジャパンレポートについて詳しくはこちら:https://www.mintel.com/jp/jr-june-2025-1
欧米は使用率約9割の“デオドラント必需品社会”欧米で人気の“複合型デオドラント”とは
2024年の世界の平均気温の基準値は、1891年の統計開始以降、最も高い値となりました。気温上昇は世界全体で起きており、特に近年の気温の上昇は著しいと言えます。暑くなれば、人はより汗をかきます。当然、デオドラントが売れるわけです。
その中で、欧米諸国のデオドラント市場は、気温上昇や製品のプレミアム化を受けて、緩やかに成長を続けています。2025年のアメリカ市場は45億6,400万ドル(見通し)、イギリス市場は5億8,800万ポンド(見通し)に達すると予測されています。インフレの影響を受けつつも、2023年~2027年の年平均成長率(CAGR)は、それぞれ1.1%(アメリカ)、0.5%(イギリス)と緩やかな成長が見込まれています。ただし、インフレ調整後の2025年単年の金額成長率では、アメリカがマイナス1.6%、イギリスがマイナス1.4%と、いずれも減少が予測されています。
出典: Mintel Market Sizes
一方、暑さが増す中で、欧米諸国では約9割の消費者がデオドラントを使用しており、デオドラントを毎日使用する消費者、1日の中でデオドラントを付け直す消費者は少なくありません。ミンテルが行ったドイツにおける調査では、約8割が毎日デオドラントを使用しており、そのうち約4割が1日の中で塗り直していることが明らかになっています。
調査対象: 英国・ドイツ:デオドラントを使用する16歳以上のインターネットユーザー 1,847人
出典: Mintel、2023年9月
しかし、消費者は物価高のために財布のひもを引き締めており、BPC(ビューティ&パーソナルケア)製品も例外ではありません。 消費者は節約のためにデオドラントの使用頻度を減らしたり、デオドラントを家族と共有したりしていることがミンテルの消費者調査から分かっています。ドイツの消費者の32%は経済的要因でデオドラント・制汗剤の使用頻度を抑えるかもしれないと考えています。 また、31%は家族とデオドラント・制汗剤を共有しており、共有によって、節約しようとしている可能性が見えます。
調査対象: ドイツ:デオドラントを使用する1人暮らしでない16歳以上のインターネットユーザー1,838人
;デオドラントを購入・使用する16歳以上のインターネットユーザー1,195人
出典: Mintel、2023年9月
また、飽和状態にある欧米市場では、各ブランドがデオドラントにスキンケア効果を付加したり、革新的なデオドラント製品を開発したりして、差別化を図ろうとしています。アメリカやイギリスのデオドラント市場の新製品では、これまでマス市場品(大量販売で買いやすい値段の品)が主でしたが、2024年にはマスティージ品(高級感はあるけれど値ごろな品)やプレステージ品(高級感のあるブランド品)の割合が増加している傾向が見られ、デオドラント市場の緩やかな成長には、気温上昇だけでなく、製品のプレミアム化も影響していると考えられます。
出典: Mintel GNPD(ミンテル世界新商品データベース)
高価格帯のデオドラントの多くは何らかの香りを訴求しています。そもそも欧米諸国では無香料を訴求するデオドラントはごく一部です。ドイツのデオドラントユーザーの6割はフレグランスの代わりに使えるデオドラントを使いたいと回答しており、欧米の消費者はデオドラントに対して制汗だけでなく、フレグランスレベルの上質な香りの製品を求めているのかもしれません。
フレグランスブランドGivency Irresistibleのデオドラント
Givenchy Irresistible Givenchy The Deodorantも、日本ではフレグランスのみ発売されているIrresistible(イレジスティブル)のデオドラント。Irresistibleのフローラルでウッディな香りが持続するという。(市場:イギリス)
デオドラントとボディローションのセット
Lanc??me Bocage Body Care Duoは、 デオドラントクリームとボディローションのセット。ランコムは日本ではスキンケアやメイクアップ製品でおなじみのブランドだが、日本では見られない組み合わせ。(市場:ドイツ)
画像出典: Mintel GNPD(ミンテル世界新商品データベース)
高温多湿の日本、“匂い”の元から徹底的に除去したい制汗剤新製品の7割が抗菌/除菌/雑菌を訴求
日本のデオドラント市場は、アメリカやイギリス以上に好調ぶりを見せています。アメリカとイギリスでは、インフレを考慮した2025年の金額ベースでの前年比成長率がそれぞれマイナス1.6%、マイナス1.4%と減少が見込まれている一方で、日本は現在、市場規模614億8,000万円に達しており、2025年もインフレ調整後で前年比1.2%のプラス成長が予測されています。また、年平均成長率(CAGR)についても、日本はアメリカ、イギリスの0.5%(2023‐27年)よりも高い2.7%(2024-28年)と予想されています。この背景には日本の平均気温が世界の平均気温以上に上昇していることがあると考えられます。2024年は1898年の統計開始以降、最も高い値となっており、長期的には100年あたり1.40℃の割合で上昇しています(世界は0.77℃)。世界と日本で異なる消費者の傾向は、日本の消費者は世界の消費者と同様に財布のひもは固くてもデオドラントに関しては例外であることです。当然、日本の消費者もインフレの影響は感じており、BPC製品の出費を切り詰める意向の人は3割程度います。それにもかかわらずデオドラント市場が成長を続けているという事実を見ると、消費者はデオドラントの出費を削っていないようです。
そして、ミンテルの調査では消費者の6割が何らかのデオドラントを使用していますが、欧米諸国の約9割と比較すると使用率はかなり低いと言えます。しかし、これは日本の消費者の体臭が少ないから、というわけではなさそうです。欧米諸国と比べると、日本では体臭があってもデオドラントをエチケットとして使用することが定着していない様子がうかがえます。日本のデオドラントが欧米諸国と比べて極めて特徴的なのは、消臭・制汗に加えて、抗菌・除菌・殺菌が強調されていることです。日本市場におけるデオドラントは、ニオイの原因となる菌を除去して体臭を抑え、肌を清潔に保つことに重点を置いていることがわかります。そして一番使用されるデオドラントのフォーマットは、アメリカやイギリスで一般的なスティックやスプレーではなく、どの性年代グループでも拭き取りシートが多く、消費者は汗もニオイも避けたいと思っていることがわかります。
出典: Mintel GNPD(世界新商品データベース)
ギャツビー アイスデオドラント ボディペーパーN アイスフルーティの外装には「ニオイ抑える殺菌力」の文字がある。
コーセーコスメポート デオカラット 薬用デオドラントボディシートは、汗臭、年齢臭、ストレス臭、疲労臭、皮脂臭を抑え、冷感を与えると共に、保湿効果のあるツボクサエキス、チャエキス、オウゴンエキスを配合している。
“人前で大汗は恥ずかしい”が女性の本音汗ケア消費を動かす“ニオイ+見た目”のWケアへ
調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
出典: Mintel、2024年12月(体臭が気になる;人前で大汗をかくのはみっともない)
日本の消費者意識を見てみると、「自身の体臭が気になる人」の割合と「人前で大汗をかくのはみっともないと考える人」の割合は共に4割と同程度で、ニオイも汗の見た目も嫌なものと考える人は少なくないと言えます。
体臭を気にする割合に男女差は見られませんが、人前で大汗をかくのを見苦しいと感じる傾向は女性の方が強いようです。また、消費者は、デオドラント以外での暑さ・汗対策にも余念がなく、2人に1人は、そうした暑さ・汗対策グッズ(冷却スプレー、ネッククーラー、冷却下着など)を使用しています。中でもよく使用されているのが携帯用扇風機で、18ー29歳女性では35%が使用しており、汗を見苦しいものと考えがちな女性で使用率が高く見られます。デオドラントを使用する人は、これらの暑さ・汗対策グッズの使用率が高く、彼らは汗をかくこと自体を徹底的に避けたいように見えます。
調査対象: 18歳以上のインターネットユーザー2,000人
出典: Mintel、2024年12月(人前で大汗をかくのはみっともない)
ビジネスチャンス
今回の消費者調査の結果、日本では体臭や汗を気にする消費者ほど複数のフォーマットのデオドラントを併用していることがわかりました。日本において2個以上のデオドラントフォーマットを使用するヘビーユーザーは、天然由来製品を肌にも環境にもやさしいと考える傾向があり、環境に配慮した容器は買う価値があると考える割合が比較的高いです。
ヘビーユーザーは、体の広範囲に、かつ頻繁にデオドラントを使用するため、製品を選ぶときは肌へのやさしさを意識しています。
+αの機能性が進化する海外市場のトレンドは日本にも?
健康促進を目的に「リンパの流れを促す」機能付き製品も登場
ヘビーユーザーは、新しい発想やテクノロジーを用いたデオドラントにも寛容と考えられます。Rollrは「地球と楽しさのためにデザインされたデオドラント」をキャッチコピーとする斬新なブランドです。(市場:イギリス)
天然由来のデオドラント剤には超濃縮パウダーを使用しており、ユーザーがパウダーに水を加えて使用します。これによって90%以上の包装を削減できると謳っています。
また、同ブランドのロールオンは、ローラー部分にローズクォーツ、ブルーデュモルチェライトなどのジェムストーンを使用しています。このジェムストーンがリンパ液の流れを促進し、特殊なローラーは、プレミアム感を演出しているだけでなく、健康的効果があります。
画像出典: Mintel GNPD(ミンテル世界新商品データベース)
■ミンテル ジャパンレポートについて
新製品開発のヒントになるグローバルトレンドと日本におけるその意味について理解を促し、日本市場における商機を探るレポートシリーズ。「美容・化粧品」、「ライフスタイル」、「食品・飲料」分野のレポートをサブスクリプション方式でご提供しています。グローバルと日本、双方の視点でトレンドを捉えることが可能です。
■ミンテル 世界新商品データベース(Mintel GNPD)について
世界86ヵ国の日用消費財の新商品を、原料や訴求内容から検索することができるデータベースです。世界各国に配置されたミンテルの調査員が、日々新商品の収集を行うことで、毎月約4万点の商品パッケージ情報をデータベース化し、GNPDを構築しています。商品のあらゆる情報を掲載しているため、様々な視点から世界の製品トレンド分析を行うことが可能です。
■市場調査会社ミンテルの強み
ミンテルに在籍する各分野の専門家であるアナリストは、 ミンテルグローバル消費者調査のデータや各国で独自に行う消費者調査、外部データなどを組み合わせて、消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測を行い、レポートを執筆しています。ミンテルは常に「消費者」に焦点を当て各サービスを展開しており、「消費者が何をなぜ求めているかを探るエキスパート(Experts in what consumers want and why.)」をコーポレートスローガンとしています。
■株式会社Mintel Japan(ミンテルジャパン)
ミンテルジャパンは、ロンドンに本社を置く大手市場調査会社「Mintel Group」の日本法人です。専門分野のアナリストと新商品の調査員を世界各国に配置し、独自の消費者調査や新商品情報の収集を行っております。
その独自のデータを基にした消費財業界のグローバルトレンドと市場変化の予測に強みがあります。日本では主に「美容・化粧品」「食品・飲料」「ライフスタイル」の3分野に注力し、サービスを展開しています。
≪ご利用条件≫
情報の出典元として【ミンテルジャパンレポート『デオドラント・トレンド - 日本 - 2025年』より】の明記をお願いいたします。
■会社概要
企業名 :株式会社ミンテルジャパン
本社所在地 :東京都千代田区丸の内二丁目4番1号
丸の内ビルディング18階
代表 :リチャード・カー
設立日 :2008年03月
事業概要 :トレンドレポートの販売、市場調査、市場分析等
WEBサイト:https://japan.mintel.com/